印紙代だけで年間6千万円の節約効果。パーソルグループの電子サイン導入までの道のりと、ドキュメントワークフローの電子化によって得られた成果とは #AcrobatDC

トレンド 活用術

9月14日に開催されたAdobe Symposium 2017のセッションにおいて、パーソルホールディングスのグループIT本部部長の馬場優子氏が登壇し、実際にAdobe Signを導入した電子契約を含むドキュメントワークフローのデジタル変革に関する取り組みを紹介した。

パーソルホールディングス株式会社グループIT本部 BITA部 部長 馬場優子氏
パーソルホールディングス株式会社グループIT本部 BITA部 部長 馬場優子氏

パーソルグループが取り組むデジタルトランスフォーメーション

パーソルホールディングス株式会社は、総合人材サービス企業として、多様な働き方への対応を推進するため、デジタル変革に取り組んでいる。現在、同社およびグループ会社3社(パーソルキャリア株式会社、パーソルファシリティマネジメント株式会社、パーソルテクノロジースタッフ株式会社)の合計4社に、電子サインソリューション「Adobe Sign」を導入している。

アナログからの脱却を目指す

馬場氏は、電子サイン導入を検討するに至った背景について、アナログからの脱却を挙げ、次のように語った。「契約業務は、印刷、製本、押印、送付など細かいオペレーションが多く、とにかく時間と手間がかかります。管理上のリスクが発生しやすい業務でもあり、例えば、契約完了のステータス管理が難しいことや、正しい印紙が貼られていない場合は追徴課税される恐れもあります。また、契約締結に関する議事録などはメールや社内メモでは残っていても、正式な記録文書が双方で保管されてないこともありました。昨今のIT化やAIがビジネスに活用されるようになる中で、依然として大量の紙を処理するアナログ業務であることに問題意識を持ち、文書の電子化に取り組むことを決めました。」

電子サイン導入に際し、3つのステップを踏んだという。まず、あらかじめ目指す姿の設定、次に適用業務の選定、最後に効果の試算だ。目指す姿の設定では、業務の効率化やコスト削減、コンプライアンスリスクの低減の他に、プロセスのIT化に社外を巻き込むことでビジネスのスピードアップを図る、記録文章に関する管理レベルを向上する、いつでもどこでも業務ができ多様な働き方の実現を目指す、という3つの目標を掲げた。

多様な法令により縛られる文章業務

この中で、最も苦労したのが適用業務の選定であった。守秘義務契約、注文書、請求書、個別業務委託契約、雇用契約書、取締役会議議事録などへの適用を検討したが、すべてを対象にはできなかったとのこと。業務に関連する多種多様な法令があり、文書の取り扱いについて整理して理解するだけでも大変な労力を伴うものであり、雇用契約では労働条件通知は書面での通知が必要とされ、電子化のプロセス構築の難易度が高い。また、大きな効果が期待される派遣契約書についても、法令の解釈で曖昧な部分が多く、電子化には踏み込めなかったという。このように、法令上の様々な要素を鑑み、最終的には取引に関する契約業務の電子化に決定した。これには電子帳簿保存法が関連しており、すでに多くの企業が取り組んでいる実績があったことで、安心して始めることができた。

しかし、多くの法令が複雑に絡み合い、難しい

印紙代だけでも年間6000万円の節約効果が期待

電子サインを導入した結果、パーソルグループ全体で、1年間で約6000万円分の印紙税の削減が見込まれ、該当する注文書は年間6万件、そして現時点での対応は見送っているが、パーソルテンプスタッフ個別契約書においては年間45万件を電子化でき、非常に大きな規模で効果が得られるとの試算を行った。

現在、パーソルグループでは、グループ全体への展開を目指し、トライアルプロジェクトをグループ企業3社で行っている。7月に設立されたパーソルファシリティマネジメント(株)では、適用可能プロセスを全て電子サイン前提での標準プロセスに変更し、これにより適用領域見極めるための具体的な課題を抽出やベストプラクティスの方向性を見出す方針だ。次にパーソルホールディングス(株)では、多様な契約書を扱っているうえ、様々な部署が関連する業務フローが長い組織において、どの程度のスピードアップやコスト削減が期待できるかを検証している。最後にパーソルキャリア(株)の提供する中途向けのダイレクトリクルーティングサービスMIIDASにおける契約業務にAdobe Signを使い、サービスの完全自動化の実現を目指している。

グループ展開に向けた3つのトライアル

現在、取り組んでいる3つのトライアルの中で、馬場氏はパーソルファシリティマネジメント(株)およびパーソルキャリア(株)のMIIDASに関して、その成果について説明した。パーソルファシリティマネジメントでは、今まで数日かかっていた注文書、請書、契約書などの処理が1日もかからず数時間までに短縮できた。また、プロセスがシンプルになったことで業務が簡単になり、発注がすぐに完了して、納品が早まったなどの意見が聞かれるようになったという。

一方で幾つかの課題も明らかになった。まずは電子契約書に誰が署名するという問題だ。従来の社内規定では、契約書は社長名義でも、総務が押印の代行をしていた。ただ電子サインになると本人の署名が必要になり、毎回社長が署名することは非現実的である。そこで、社内規定を調べ、職務権限規程に則って契約内容承認権限を持つ本人が署名することに決めた。ところが、実際に運用してみると、契約者名義が変わるために不安なのか、従来の社長名義での署名を求める要望が多く、これまでの商習慣を変えていくことが本質的に重要だと感じたという。

次に電子帳簿保存法への対応。会計関連で保存が求められる見積もり、注文書、請書などは、電子帳簿保存法では、検索性を始めとする電子保存要件を満たす必要があり、電子サインの導入だけでは、対応できない部分があったという。さらに下請法への対応においては、契約を電子化する際に、相手方の同意を必ずエビデンスとして残すことが求められるが、どの取引が該当するかの確認作業が煩雑で、間違いが起こる可能性があったため、電子で契約書を取り交わす際には必ずエビデンスを残すよう、社内ルールを設けた。

そして最も難関なのが取引先への理解だ。相手側企業の担当者に電子化の知識や経験がない場合も多く、窓口になる担当者がしっかりと対応できるように説明会を開催し、資料を作成するなどフォロー体制の構築が必須だったという。

一方、MIIDASは、サービスの申し込み完了後、候補者検索、面接オファー、面接スケジュールの確定までをすべて自動で行うシステムになっている。しかしSalesforceを利用した契約管理システムでは、最後の契約書の取り交わし部分は紙で行い、人力で処理していたため、ステータス管理上の課題があった。このため、APIを通じたAdobe SignとSalesforceとの連携により、フロントとバックのシステムを完全自動化することで、ステータスの可視化と業務の高速化の双方を実現できた。システム連携の設定自体も簡単で約一カ月程度で完了できたという。

馬場氏は今回のプロジェクトの成果について、以下のように語っている。「電子サイン導入における課題が見えてきました。例えば、関連法令が非常に多い上に複雑なことや、電子サインシステムを導入するだけでは業務移行が完了できないこと。また、取引先や社内理解の醸成が必要など、全社的に取り組んで行く必要があります。一方で、苦労した分、それを上回る効果も期待できます。社外を含めてビジネスプロセスをシンプル化することで、単に印紙代や郵送代のコストを削減できるだけではなく、ビジネスのスピードアップという付加価値が生まれます。またプロセスの可視化や重要な合意事項を容易に法的価値のある記録として残せることで、コンプライアンス対策にも有効だと考えています。ITの力でプロセスをシンプル化しビジネスを加速化することで、社会全体の生産性を向上して行きたいと考えています。」

ビジネスプロセスの電子化顧客体験向上

アドビ カスターマーサクセスマネージャ 鈴木那実
アドビ カスターマーサクセスマネージャ 鈴木那実

アドビのカスターマーサクセスマネージャの鈴木那実は、「72%のビジネスリーダーは、文書プロセスの改善により顧客の満足度が向上すると考えている*。ビジネスプロセスの電子化の成功には、適法性、業務障壁、技術的課題といった3つの実務上の課題に加えて、その先の顧客体験を見据えた変革が必要」と力説する。パーソルホールディングの馬場氏が講演で触れたように、社内だけではなく取引先に対しても優れた体験の共有が求められる時代になっている。PDFを発明したアドビが提供するAdobe Signは、電子文書における信頼と実績に加え、顧客体験を高める機能を進化させている。例えば、印鑑やスマホを通じたモバイル署名への対応や特定の業務向けにクラウド電子署名機能を提供している。アドビは今後もユーザに常に最新の体験を提供することで、顧客のビジネスプロセスの電子化を支援していく。

*「より効果的なドキュメントワークフローによる業務革新」IDC InfoBried 2016年4月

・Adobe Signの詳細はこちら

POSTED ON 2017.12.5