音声UIのエキスパート達が語るデザインに役立つアプローチ | アドビUX道場 #UXDojo

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Adobe XDに音声プロトタイプ機能が追加されました。画面と音声のプロトタイプが、ひとつのアプリで実現されるのは初めてです。音声は人のコミュニケーションの基本手段とはいえ、音声インターフェースに話しかける体験は、画面上のグラフィカルなインターフェースを操作する行為とは異なります。

音声UIをデザインする際のヒントは既に別の記事でも紹介しましたが、この記事では、音声UIの専門家からの音声体験のUXを向上するヒントをいくつかお伝えします。

「アプリを使ってアラームを設定するのは実に明快な作業です。アプリを起動し、日付と時間を選べば、それで準備完了です」、とグーグルの会話デザイン支援のトップでありDesigning Voice User Interfacesの著者であるキャシー・パールは説明します。「ですが、音声でアラームを設定するとき、それはずっと複雑なものになります」

アラームを音声で午前8時に設定するための指示を、すべて想像してみてください。

  • えーと、アラームを明日の朝8時に設定してもらえない?
  • アラーム 午前8時
  • 8時に起こして
  • 午前8時にタイマー設定して。明日ね
  • 目覚ましを8時で設定お願いします

「これが、音声体験のプロトタイプが完全に必須である理由です」とキャシーは指摘します。「コーディングを開始する前に、実際の人々から発せられる可能性のある言葉を集める何らかの手段が必要です」

「デザイナーの視点から見ると、音声はデザインに新しいワークフローと機会と障害を持ち込みました」と、Adobe XDの音声プロトタイプ機能に関わったエクスペリエンスデザイナーのスセ・シェンダービー・ジェンセンは同意します。

「対話のサンプルをつくり話をかみ合わせることから、思い込みを打破して共感を勝ち取ることまで、この新しいインターフェースのデザインに飛び込んだデザイナーは新しい挑戦に直面します」。

対話のサンプルを大きな声で読む

プロトタイプ作成は面倒だとしても、音声ファーストの体験デザインをごく簡単な手段から始めることができます。アマゾンの音声開発者プログラムのトップからCodePenに移動したばかりのキャシディー・ウィリアムスは、会話をデザインする際に2つの点を強調します。

「アイデアを書き留めたとき、ほぼ例外なく、それを黙読するのと大きな声に出して読むのでは違いが出ます」と彼女は説明します。「大事な点は、大きな声で読み続ける(または演じ続ける)ことです。そして、変更や調整を行う際は、ただ読むだけでなく、ちゃんと聞くことです。大声で話されたとき不自然に感じられる言葉や文章のニュアンスを感じるでしょう。それを早い段階で捉えることが重要です」

スセもこれには同意しています。「どんな良いユーザー体験も、あるひとつのユーザーフローから始まります。これは、音声体験では、サンプルダイアログと呼ばれます。ユーザーと音声インターフェースのごく単純なやりとりを書いたもので、体験のハッピーパス(Happy path)とも呼ばれます」

次のスセのアドバイスも覚えておきましょう。画面を伴わない音声体験には、GUIも頼るべきメニューも無く、すべてが順番に発生します(フラットUIと呼ばれます)。その流れの中で、明確なオプションを提供し、期待を設定することで、ユーザーを導かなければなりません。できるだけ早い段階から音声プロトタイプに話しかけて検証を行い、指示と返事を見直して、ユーザー体験を改善しましょう。

明確なオプションを提供する

キャシディーは、どんな種類の返事にもいくつかの選択肢を用意することを推奨します。「ユーザーは気難しいものです。特に声を使うときは」」と彼女は微笑みました。「場合によっては共感を表す言葉を使い(例えば旅行アプリなら、会話の次のステップに進む前に『おや、楽しそうな旅ですね』)、同じ発言に対して常に少しずつ異なる反応を返します。すると、会話が自然で弾むようになります」

例えば、もしユーザーがどのレストランで食べるかを決めようとしている場合、どんな料理が食べたいかを聞いた後、以下のような会話を用意しておくことをキャシディーは提案します。

ユーザーの言葉 音声UIの返事
「どうしようかな」
「よくわからない」
「どこでもいいんだけど」
「特に思いつかない」
「とにかく早く食べたい」
「問題ありません。よろしければ私が選びましょうか?」
「そんな時もあります。そうですね。和食はどうでしょう?近くに3件あります」
「ちょっと冒険してみませんか?いくつか適当に選んでみました」
「イタリアン!」
「中華かタイ料理?」
「高すぎなければなんでも」
「おいしそう!あなたの近くにあるイタリアンレストランをいくつか紹介します」
「良い選択ですね。どのくらいのお値段のお店を探していますか?」
「それはいいですね。ちょっとおしゃれなお店が良いでしょうか?」

この例では、ユーザーのために選択したり、より詳細を聞き出したり、様々なオプションが提供されています。

「回答を変えることで会話の流れはより自然になります。同時に、ユーザーが更に話すための選択肢も提供します」とキャシディーは説明します。「ユーザーが何を話すかを事前に知ることはできません。ですから、元のコンセプトに従いつつ会話の練習をして、それrを並べて選択肢を追加するのがしっかりとした音声デザインをやり遂げるための理想的な方法なのです」

また、スセは、ユーザーに選択肢を与えて、求めているものを絞り込むチャンスを提供することで、エラーを防げると指摘します。

ユーザー:ねえ、グーグル。アーリントンで一番高いビルは何?
グーグル:それはバージニアのアーリントン?それともテキサスのアーリントン?

返事は短く、ユーザーと共に成長を

人は読むときと聞くときでは、理解のために使用する能力が異なります。この点についてのスセのアドバイスは、音声メッセージを短く単純にすることです。そして、ユーザーに与える選択肢を最低限にします。なぜなら、一度に3つ以上のことを覚えるのは難しく、音声によるインタラクションには時間効率が大切なためです。

「初めてのユーザーには、彼らの言葉を繰り返して確かめることも有効です」とはスセの提案です。「ユーザーは理解されていると感じますし、なによりシステムが意図を誤解していた場合に会話を軌道に戻す機会になります。あとは、ユーザーがGoogle HomeやAmazon Echoのようなデバイスの音声アシスタントと対話しているときは、光やチャイムが、会話の補助としてユーザーの音声体験を導く重要な役割を果たします」

一方、既に使い慣れたユーザーのためのデザインであれば、多くの補助を省略できます。例えば、毎回曲名とアーティストを紹介する代わりに、単純に曲を流すだけでよいでしょう。

オズの魔法使い方式ですばやく進む

オズの魔法使い方式を試すのはどうでしょうか。ユーザーの言葉に対して、魔法使い(つまりあなた)がテキストを読み上げて返事をするのです。音声UIデザインストラテジストベン・ザウエルは、この方法を使ったプロトタイプは、ばかばかしいほどに簡単で楽しいと説明します。

「何か会話を想像できたなら、それを書き留めれば、ユーザーとのテストまでは数分もかかりません」とベンは言います。「オズの魔法使いテストでは、被験者は本物のシステムとやりとりしていると思っていますが、実のところそのシステムは、魔法使い、すなわちデザイナーに操作されているのです。これは本当に上手くいきます。Amazon Echoを部屋に置き、音声をPCから出力すれば、ほとんどの被験者は喜んで騙されます」

こうしたテストの実施を助けるツールは沢山あります。Say Wizardは、ベンがグーグルのアビ・ジョーンズと協力して開発したツールです。テキストファイルを読み込み、それぞれの行にキーボードの文字を割り当てて、そのキーが押されると読み上げまる機能を持っています。

Say Wizardスクリプトのログ出力の画面キャプチャ
Say Wizardの実際の使用例

「テストを実施すれば、ユーザーが何を言うかを実際に見ることができます。そして、自分のデザインが正しい回答を持っていたかを確認できます」とベンは解説します。「この方法のポイントはやり直しにかかる時間です。テストの間のデザイン変更に必要な作業はテキスト修正のみです」

オズの魔法使い方式は、デザインの初期にとても適したテストです。想定した会話の問題点と、人々の反応の様子を素早く捉えられます。「音声UIデザイナーにとって一番大きな課題、エラーへの丁寧な対処には役立ちませんが、会話が進行する様子を伝えてくれます。それがここでの最も重要な目的です。『人と機械の会話をとりあえず進行させる』ことです」

より詳しくは、ベンの記事STFU: Test Your Voice App Idea in Less Than An Hourをご覧ください。

エラーに対応する

多くのユーザーが言葉をいくつか間違えて発音するでしょう。英語が母国語かどうかは関係ありません。「私がサラダを注文するやりとりをデザインしていたときのことです。ユーザーにはサラダと温野菜(warm bowl:ワーム・ボール)の選択肢がありました」とスセは記憶を辿ります。「ところが、インターフェースを試していたとき、システムは私の『ワーム・ボール』を『ワームホール」と解釈し続けました。私は、『ワームホール』を語彙のひとつに追加して、それを回避しました」

このように、デザインを何回も見直し、ユーザーとテストするのは非常に大切です。特に、バイリンガル、発話障害を持つ人、子供や老人が対象ユーザーに含まれる可能性がある場合はなおさらです。

ユーザーが迷わないように、あるいは迷ったユーザを捉えられるように、エラーへの対応は重要です。スセは、サポートするための返事の準備が鍵だと言います。さらに、ユーザーとの会話を進める中で、必要に応じて助けが得られることを伝えておきましょう。

音声プロトタイプの持つ価値

キャシーは、プロトタイプの価値は、そもそも話すことができるのか?いつ話すことができるのか?をユーザーが分かっているかを明らかにできる点も含まれると言います。これは、スマートスピーカー、スマートフォン、スマートディスプレイなど、音声体験がより多くのプラットフォームから提供されるにつれて、より重要になりました。

「プロトタイプは、体験がどのように感じられるかを共有するためのとても優れた手段です。書き記されたサンプルダイアログは重要な最初の一歩ですが、実際の音声によるプロトタイプこそが、本当の意味でそれを確認する手段です」。


この記事はHow to Prototype Voice Experiences that Delight Users(著者:Oliver Lindberg)の抄訳です

POSTED ON 2018.12.3