UX評価のい・ろ・は 2 本当の「ユーザーの本質」の見つけ方 | アドビUX道場 #UXDojo

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前回、UX 評価のメリットと取り組むための考え方について解説しました。適切にUX評価を行うためには、データを集めることと、ユーザー行動・心理の本質を把握することが不可欠です。

UX評価では、的確なデータを集めることが重要です。特にユーザーインタビューは、ユーザーの本質を見出すデータの収集に重要なアクティビティです。ユーザーインタビューでは、ただユーザーの声を集めるだけでは不十分です。ユーザーの声がそのままユーザーの本質というわけではありません。そこで、この記事では、ユーザーの本質を理解することの重要性と、ユーザーインタビューに役立つ質問の仕方を紹介します。

いずれかが欠けていると、適切な改善に繋がらない場合があります

場当たり的なデザイン対応の落とし穴

Web サイトは様々な決断の産物と呼ぶことができます。短期的なビジネスゴール達成を目的とする決断、あるいは技術的制約を反映した決断が含まれるかもしれません。また、決断には、チーム構成やクライアントとの距離といった人との関係性が影響しますし、個人のセンスや直感で決まった決断もあるでしょう。

何を決めるにせよ、その判断には、事前に情報・知識をもっているかいないかで大きな違いが出ます。もちろん、ただデータを持っているだけでは不十分です。データを分析して、何がうまくいっていないのか、その理由は何かを理解して始めて、主観的なデザインの評価から卒業した、説得力のある提案になります。

ユーザーの本質を見ていない評価を基にした対応は、バンドエイドを貼るだけのような応急処置になりがちです。その場はうまく凌ぐことができたとしても、また症状(web サイトの問題点)が再発してしまうでしょう。以下は「本質の理解」が欠けた例です。

  • ユーザーに web サイトを回遊してもらいたいという理由で、関連情報や告知ウィンドウを設置する。ユーザーがなぜ回遊しないのか。そもそもなぜ回遊させたいのか理解しないまま、単純に数字を上げるための評価・改善になる。
  • ユーザーから「共有ボタンは必要ない」というフィードバックをもらったので、言われたままに実行する。データから読み取れる定量的な傾向を無視して、特定のユーザーの声を間に受けてしまう。

いずれの例もユーザーの行動や心理の本質を理解していないが故の短期的な改善提案です。最初の例では、運営側の都合だけでユーザーの行動を想定しています。2つ目の例は「あるユーザーの声=本質」と勘違いして、全体像を見失っています。

ユーザーからのフィードバックは重要ですが、彼らの口から発する言葉がそのまま真意であるとは限りません。ユーザーインタビューでは、ただユーザーの声を集めるのではなく、本質の理解に必要なデータを得られるように、一歩突っ込んだ質問を用意する必要があります。

ユーザーの「なぜ」を聞き出すための質問の仕方

自動車会社フォード・モーターの創設者であるヘンリー・フォード氏は、「もし顧客に欲しいものを尋ねたら、『もっと速い馬が欲しい』と答えていたことだろう」と言ったという話です。フォード氏がこの言葉を残したという証拠はないみたいですが、ユーザーの本質を探る上で重要なメッセージなので参照しています [参考記事]。これは、ユーザーの声を聞くべきではないという意味ではなく、顧客の要望を丸呑みせず、答えに対して「なぜ」と深掘りする思考をもつべきだという教訓です。

ヘンリー・フォード氏の例に倣って、顧客への質問の仕方を考えてみましょう。自動車が広く使われる前は馬車が主な移動手段でしたから、馬車のオーナーに対して「どんな馬車が欲しいですか?」「今の馬車で満足していますか?」といった質問から始めるかもしれません。この質問に対して、フォード氏の言うように、「もっと速い馬が欲しい」という答えを得ても、さらに質問をしていくと彼らの本質が少しずつ見えてきます。

例えば以下のような質問ができるはずです。

  • そもそもなぜ馬車を使っているのですか?
  • 馬車があって良かったと思えるエピソードはありますか?
  • 馬車があることで生活が変わりましたか?
  • あなたの1日について聞かせてください
  • 馬車を利用するときの様子を教えてください

「なぜ」のようなフレーズを使うなど、行動の意図や動機を引き出す質問をするよう心がけましょう。多くの人は、馬車に乗りたいから乗っているわけではなく、目的地に早く辿り着きたいから乗っていると答えるでしょう。だとすれば、顧客の本質は「目的地に早く辿り着く」であり、「馬車に乗る」ではないわけです。

「あなたの1日について聞かせてください」のように一見関係のない質問でも、彼らの生活の中で馬車がどう彼らと関わっているのかを知るチャンスになります。例えば、馬車の手入れに多くの時間を費やしているのが分かれば、手入れの出前サービスを提供したほうが早い馬より顧客獲得には効果的かもしれません。

web サイトを利用する人たちへの質問にも同じことが言えます。使いやすさや見た目の良し悪しの質問は、ユーザーの本質を探り出す一歩にはなりますが、さらに深掘りするための質問が不可欠です。

  • 何を達成しようとしているのかを理解する: 記事を読む、商品を購入するという行動だけでなく、その行動の動機を探り出すようにします。
  • 開かれた質問にする: 「商品は購入できましたか?」という質問だと「はい」「いいえ」になりがちです。代わりに「商品を購入したときのことを教えてください」にすると、手順を含めて詳しく聞くことができます。
  • 言葉にしていないところに注目する: web サイトの操作にちょっと詰まっていたり、少し表情を変えたとしたら、それに対して「何かありましたか?」と質問するようにしましょう。ちょっとしたニュアンスの中に、課題解決のヒントが隠れています。ユーザーインタビューでは質問するだけでなく、実際に操作する様子を観察しましょう。

少しずつ挑戦

UX評価に必要なユーザーの本質を引き出すために、インタビューは欠かせません。本格的なインタビューは時間もコストもかかりますし、専門的な知識も必要になるでしょう。インタビューは簡単ではありません。しかし、諦めるのは良くありません。

これまでインタビューをしたことがないなら少しずつでも取り入れましょう。知り合いにインタビューするという軽度なものでも、インタビューをまったくしないより何倍も意味があります。「こういう見方・使い方があるんだ!」という気付きは必ず見つかりますし、ユーザーの本質の理解につながれば、デザインの説明にも説得力が増します。

インタビューを通して厳しい感想をもらうのが嫌だという気持ちがあるかもしれません。しかし、ユーザーの本質の理解は、webサイトを運用するお客様のゴールを達成するために必須の過程です。経験を積まなければいつまでも遠い存在になってしまいます。まずは身近なところから少しずつインタビューをして、周り声に耳を傾けることから始めましょう。

POSTED ON 2018.04.24